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北海道次世代の会-植林ツアー・研究林見学ツアーに参加しました!

2022年07月21日

こんにちは♪
すっかり夏らしくなってきた今日この頃ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
これから家づくりを検討される方だけではなく、なるほどー!!と思ったことがありましたので共有させていただきます。

こちら。
事務所に届いた木材のサンプルなのですが、みなさまこちらの木・・・樹齢何年くらいだと思いますか?
まずそんな事を頭の中で少し考えていただきながら、本日のブログを読んでいただけると嬉しいです♪

・・・・・・

北海道の住宅づくりの次世代を担っていくメンバーで構成された勉強会 「北海道次世代の会」― 工務店や設計事務所など会社の枠にとらわれず、建築に携わる若手たちが家づくりを様々な視点で学べる場として設定されています。
先月そして今月と「次世代の会」の勉強会に専務の菊澤章太郎が参加。
先月今月のテーマは日本の木造住宅の要となる「木」について。
実際に森にはいらせていただいて見学することにより知識を深めてきました・・・!

<6月の次世代の会 植林ツアー「広葉樹産業と里山構想」>

2022年5月26日・27日
針葉樹、広葉樹 北海道に分布する森は大きく分けてこの種に分かれますが、
どちらにもメリットデメリットがあるそうです。


<針葉樹>
現在日本では主に針葉樹(スギ・ヒノキ・マツ)の植林がメインで行われています。
成長の早い針葉樹林は広葉樹より成長が早く、比較的真っ直ぐに成長すること、また、広葉樹に比べ柔らかく加工が容易なことから建築資材として活用されています。
しかし、根っこも真っ直ぐ下に伸びやすく、周囲に広がって根を張らないため、山の斜面に植林した場合にがけ崩れを発生させる要因となってしまったり、葉が落ちない常葉樹なので腐葉土ができないというデメリットもあります。
また、あまりにもスギやヒノキを大量に植えてしまったことで、花粉症の問題も生じてしまいました。
葉は油分を多く含むものが多いため分解されにくく、木の実やキノコ・山菜などが育ちにくいことから、針葉樹のみの人工林ばかりだとクマやエゾシカなどの食料が不足し、それらの動物が住宅街へ降りてくる要因となってしまいます。

<広葉樹>
成長が遅く、堅い材が多いのが特徴です。
キクザワの造作家具等に多用されているタモ材や床材のナラなどが広葉樹です。
苗を植えても食害に合うケースも多く、生育に時間がかかってしまう(林としての価値を高めるには100年以上の歳月がかかる)ため、
植樹されることはほとんどないのが実情だそうです。
綺麗な木目や堅く耐久性に優れることから、住宅の内装材や家具材などに活用されています。
しかし、木の乾燥に時間がかかったり、堅いため、加工には技術を要するなど、扱いの難しさもあります。

どちらかに偏った森はバランスがおかしくなってしまうのでお互いのメリットデメリットを補完できるよう「針葉樹と広葉樹をミックスして植林してみたらどのような森になっていくのか…⁈」 →「混交林」を目指すプロジェクト!それが今回参加した植林ツアーの概要です。

植林予定地までの道中には様々な木が見られました。

多くみられたのが、ハンノキやカラマツ、シラカバなど。

ハンノキ:広葉樹の中では成長が早く、なめこなどが育ちやすい。窒素を取り入れ、豊かな土壌をつくり上げてくれる

カラマツ:針葉樹の中でも落葉するため、森を豊かにしてくれる。ラクヨウダケなどもはえるようです。

シラカバ:広葉樹の中では比較的成長が早い。樹液はキシリトールの原料となるなど、野生動物が好む木のため、植樹しても食害にあいやすいようです。


↑実際の植林の様子。
写真でもわかりづらいですが、ピンクのリボンをつけたシラカバの苗木を植えています。
作業としては簡単ですがこの木が大きく育つまでには、何十年何百年と時間がかかります。

確かに最近も、住宅地にクマが出没するニュースが多く報道されています。
クマが出没する背景には、森の生態系が乱れ食料が不足している事にも起因しているのかなと個人的に思ったりしました。
森を豊かに保つことが共生のために欠かせない視点という事ですね。。。

<北大の研究林見学>
2022年6月23日
北海道大学所有の貴重な調査研究林に入らせていただきました。

80年くらい前まで農耕地だった場所ですが、その後放棄された結果自然と森に戻って行ったようです。(白樺、ダケカンバは最初に生えやすい木で近年白樺の価値が見直されています)

もう少し林の奥に歩みを進めていくと、原生林に入りました。
原生林は人間が一切の手を入れていない林のことを言います。
先の林にはシラカバなどが多かったですが、原生林に入ると樹種も少し変わり、大きく立派な木々が生い茂っています。

北海道で地形よく植物が生育しやすい場所で残っている原生林はほとんどないらしく、人が入って研究することのできるこの原生林は貴重だそうです。

原生林を進みながら、色々なことを教えてもらいました。

<森ワード>
①択伐:択伐:森林内の樹木を計画的に少しずつ抜き切りすること
自然に木が朽ちていく分の量を択伐で収穫すれば、木材量は変わらず、自然を残したまま持続可能な林業ができるという考え方ですが、結果的にこの方法はうまくいかなかったようです。
朽ちるはずの木を伐採した分、新しく木が育つことが前提ですが、新たに落ちた木の種の多くが笹の落葉の上に落ちてしまい、
発芽しても土に根を張ることができず、運よく地面で発芽しても、笹の葉が高く茂って光合成できないことが要因のようです。

②倒木更新:朽ちた倒木の上に次世代の木が生えることで林の世代交代が行われることだそうです。
写真(上)は倒木の上に生えた赤エゾマツです。
赤エゾマツはこの森林ではほとんどが倒木更新によるものだそうです。
     
倒木上は土と違い栄養分は劣ります。でも栄養が少ないことで菌の繁殖が抑えられ、幼木が病気にかかりづらくなります。
幼木が倒木に生えることができるようになるまで倒木してから30年ほどかかるそうです。
そして、写真のマツの小さな木(高さ30cmくらい)は、発芽から15年ほど経っているそうで…。
気を付けなければ、知らなければ、踏んでしまいそうな、か細い木ですが、ここまで来るのに50年近い歳月がかかっているんですね。
この幼木の近くに立つ木が寿命を迎え、朽ちて倒れた時、この幼木は日光をたくさん浴びることができるようになり、大きく育つようになるそうです。
そして、倒れた木はまた時間をかけて朽ちてゆき、新たな木が生えるんですね。
     
なお、択伐すると切った木が搬出されてしまうため、倒木更新がなされず次世代の木が生えなくなってしまいます。

色々なお話を聞かせていただきながら、人間と木々の時間のスケールの違いを肌で感じ、ただただ圧倒されてしまいました。

そして、場所を移動し、天然林を15年ほど前に皆伐した場所へ。

北海道は笹が多いのですが(※本来は笹は寒さに弱いが積雪で地面が凍らないため冬を越せたため)
地面を覆い隠してしまうため幼木が育ちにくい生育環境となっています。

ササを重機ではぎとることで、土壌が裸出します(かき起こし)。
そうすることで稚樹が発芽しやすい環境を作ることができます。
このような作業を天然更新補助作業といいます。
苗木を生産するコスト、苗木を植えるコスト、植えた苗木を育てるコスト(下刈り)が省略できるので、低コストで森を作ることができます。
またその地域の遺伝子で構成される森になり、これもメリットのひとつです。


↑数年でここまで(3mくらい)成長!

ここの場所は「かき起こし」に加えて、はぎとった表土とササ根茎を再び施工地に戻す「表土戻し」という作業を行った場所です。
表土には栄養分がたくさん含まれています。
表土戻しを行うと、戻した表土の栄養が更新したシラカンバの成長に利用されるため、通常のかき起こし地のシラカンバより、数段成長がよいのです。
(表土戻しは雨龍研究林で開発された技術です。)


↑写真はどちらも樹齢約30年(!!)のシラカバです。木の直径は4~5倍くらいの差があります。日当たりなどの生育環境でここまでの差が出るそうです。

・・・・

お伝えしたいことはたった一つ!!

木が育つには何十年何百年と、とにかく時間が必要だという事です。
最初に掲載したこちらのナラの板材も、

きっと、百年以上の時間をかけて成長しこのような綺麗な木目が見られる製材となったんですね。
普段何気なく歩いている無垢フローリング材や何気なく使っている木製品には、その背景にものすごい歴史や時間があるのだなということに気づかされました。

そして、少しずつ森林資源も少なくなっているという事実は木造住宅に携わる者として、目を背けてはならない事実だと痛感しました。

木を切ることそのものが悪い、というわけではなく、次世代に資源を繋ぎながら、資源を活用していくことが重要だと考えます。
木は光合成により二酸化炭素を吸収し、酸素を放出します。
つまり、木は二酸化炭素を貯蔵してくれます。木を切り、材料として活用することは二酸化炭素を住宅に貯蔵することとも考えられます。
木を切ること、新たな木々を育てる事を両立することで、地球環境を守りながら豊かな暮らしを生み出すことができるのかな、と思います。

木の生きてきた時間を大切にいただき
想いを引き継ぎながら
豊かに生きていきたいもの・・・。
北海道の木造住宅建築に携わる者として
地球という一つの家に住む住人の一人として
「使うのと同じく資源を育み、次の世代へとバトンを繋いでいく」
これから会社の一つの使命として、環境活動にも貢献していきたいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

記事監修のご協力:
北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター 森林圏ステーション
北管理部 雨龍研究林
坂井様